都市縮小の時代

前から気になっていた矢作弘先生の『「都市縮小」の時代』を読み終えたー!

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)

日本は戦後復興から高度成長時代まで、農山村に多く散在していた労働者が都市へやってくることで都市人口は莫大に増えた。人口規模は都市のステータスでもあった。しかし、今や人口減少時代に入り、どの都市でも労働力の受け皿として拡大した郊外住宅地でも様々な問題が起こっている。
例えば空家・空き地が増えることで治安を悪化させる(割れ窓理論)、インフラ整備コストが割高になる、人口減少・高齢化が進む地域から郊外商業施設などが撤退→郊外居住者にとって不便な地域に、人口減少によってコミュニティの崩壊、商業施設の撤退・コミュニティの崩壊などによって高齢者を引きこもらせることに…

このような問題は日本だけでなく、先進諸国で起こっているようです。本書ではその例としてアメリカとドイツ、そして日本の各都市がケース・スタディーとして取り扱われています。画一的な解決方法はないでしょうが、各事例から言えることは以下のとおりだと思います。
・人口が多い=大きい都市という「拡大信仰」を捨て、人口減少という現状を受け入れた政策が必要
・インナーシティにもともとある資産に高付加価値を与えていく(オサレなカフェや、アトリエ、デザイン事務所、他にも行政が大学や地元企業との産官学連携を進めることで起業を進めるなど)
・1市町村だけで「雇用」も「住宅」も用意するのではなく、近隣地域と連携しエリアで役割分担
・今後コミュニティ形成が見込まれない住宅地は解体して、緑地にするなどの施策が必要
…といったところでしょうか

興味深いと思ったことは
1、エリアの役割分担をどのようにして決定しているのか:独・ライネフェルデでは近隣地域で住・職の役割分担をしていた。日本では市町村同士の広域連合でこのような話ができるだろうが、「賢いコンパクトシティイメージ」を描いたリーダーが引導していかなければ実現は難しいだろうなぁ
2、郊外住宅地で退去を迫られた住民に対するケア。「住み慣れた地域を離れる」ということはもちろん転居先の家賃、人間関係の形成などを考えると退去を拒むのは納得がいく。いきなりインナーシティへ移転するのが難しいのであれば、薄く広く広がってる郊外住宅を1つにまとめるという政策の方がいいかも。
3、郊外戸建住宅の地権者との交渉。郊外の空家住宅を緑地にすることで環境がよくなったところに、その地域の一区画所有者が「周辺環境の良い住宅」として住み始めるor売却する可能性がある―というフリーライダー問題をどう回避するのかなど。
4、建築基準法―つまり、家を建てる段階での問題。これまで新築・増改築の拡張主義できた世間の考え方を反映したものから、縮小都市の時代を迎えて建築基準法の改正も今後の問題になる、と筆者は言う。

今後研究を進めていく上で色々示唆を与えてくれる本でした。新書だし読みやすいので、人口減少時代における都市政策について考えたいなーという人にはオススメです。